はじめに:もしも、マイホームの夢が"悪夢"に変わってしまったら…
「夢のマイホームが、もうすぐ建つはずだったのに…」
最近、ある住宅メーカーが突然倒産し、多くの方が途方に暮れる出来事がありました。土地を買い、ローンを組んで2000万円近く支払った後、連絡が途絶え、ニュースで倒産を知ったご夫婦もいます。楽しみにしていたリビングやキッチンが広がるはずの土地は、空っぽのまま。
今の建築業界は、材料費の値上がりや人手不足で、まじめに頑張ってきた会社でさえ、いつどうなるか分からない厳しい状況にあります。
家づくりは、人生で一番大きなお買い物。だからこそ、家族の未来と大切なお金を守るための「お守り」が必要なんです。それが「住宅完成保証制度」です。
これは特別なオプションではなく、今の時代、絶対に知っておくべき安心の仕組み。この記事では、この制度のすべてを分かりやすく解説し、あなたを最悪の事態から守るための安心ガイドをお届けします。
建築会社が倒産したら、一体どうなっちゃうの?
工事がストップするだけじゃない、次から次へと大変なことが起こります。そのリアルを知ることが、自分を守る第一歩です。
なぜ、支払ったお金は戻ってこないの?
まず知っておきたい、ちょっと厳しい現実。それは、私たちが支払った着手金や中間金は、法律上「建築会社の資産」になってしまうということです。倒産すると、そのお金は他の借金返済などに回されてしまい、私たちの元に戻ってくる可能性は、残念ながらほとんどありません。
さらにショックなのは、建てている途中の家も、引き渡しが終わるまでは「建築会社の所有物」だということ。つまり、自分のお金で建てているはずなのに、その家の所有権を主張できない…なんて、納得いかない状況になってしまうんです。
夢の跡…雨ざらしのマイホーム
会社が倒産した瞬間、工事はすべてストップ。建てかけの家は雨風にさらされ、木材が腐ったり、カビが生えたりと、どんどん傷んでしまいます。現場の材料が盗まれてしまうことも…。
これ以上傷まないようにシートで覆うなどの応急処置も必要ですが、その費用は自分たちで負担しなくてはならないことが多いのが現実。夢のマイホームが無残な姿で放置されるのは、本当につらいことです。
次の会社探しは、まるでミッション・インポッシブル
工事を引き継いでくれる別の建築会社を見つけるのは、想像以上に大変です。新しい会社は、どこまで工事が進んでいるか、安全性は大丈夫か、すべてゼロからチェックし直さなくてはなりません。
それに、会社によってやり方や職人さんも違うので、スムーズな引き継ぎはほぼ不可能。他人の工事の責任を負うことになるため、多くの会社は嫌がったり、すごく高い追加料金を求めてきたりします。
避けられない追加費用
もし運よく次の会社が見つかっても、おうちを完成させるまでのトータル費用は、最初の契約額より必ず高くなります。再チェックの費用や、途切れた工事を再開する非効率さが原因です。住宅ローンをめいっぱい組んでいると、この追加費用が払えず、家づくり自体を諦めなければならないケースも…。
お金だけじゃない、心のダメージ
金銭的なダメージ以上に大きいのが、心への負担です。「どんなおうちにしよう?」というワクワクした気持ちは、不安や裏切られた気持ちに変わってしまいます。存在しない家のローンと、仮住まいの家賃の二重払いを続けながら、複雑な手続きや計画の立て直しに追われる…そのストレスは計り知れません。
大切なポイント
建築会社の倒産は「悪い会社」だけの話ではありません。多くの会社は、お客さんから受け取ったお金で材料を買い、職人さんに給料を払う…という、いわば「やりくり」で経営しています。そんな中で、急な材料費の値上がりなどが起きると、たとえ黒字でもお金の流れが止まって倒産してしまうことがあるんです。
だから、会社の評判や実績だけで判断するのは難しい。そこで、客観的な第三者が「もしもの時」を支えてくれる、住宅完成保証制度が不可欠になるのです。
あなたを守る生命線「住宅完成保証制度」の仕組み
この制度は、一言でいえば「第三者機関による安心のセーフティネット」です。もし建築会社が倒産して工事が続けられなくなっても、保証機関が間に入って、金銭的なダメージを最小限に抑え、おうちの完成をサポートしてくれます。
とっても大事なポイント!
この制度は建築会社が加入するものだということ。家を建てる私たちが、後から個人的に入ることはできません。だから、会社選びの段階で「この制度が使えますか?」と確認することが、絶対に必要なのです。
具体的に、何が保証されるの?
保証の大きな柱は、主にこの2つです。
- 追加でかかる工事費用の保証(増嵩工事費用)
別の会社に工事を引き継いでもらう時に発生する追加費用を、保証機関が一定額までカバーしてくれます。 - 支払ったお金の損失保証(前払金保証)
支払ったお金のうち、まだ工事が進んでいない部分の損失をカバーしてくれます。例えば、たくさんの着手金を払った直後に倒産してしまった…という、一番大きな金銭リスクから守ってくれる、非常に重要な保証です。(※ただし、すべての保証制度にこれが付いているわけではないので要注意!)
保証のタイプは2種類!「保険タイプ」と「エスクロータイプ」
保証の仕組みには、大きく分けて2つのタイプがあります。この違いを知っておくと、より安心な選択ができます。
一般的なタイプです。私たちは工事の進み具合に合わせて、建築会社に直接お金を支払います。もし倒産という事故が起きたら、保証機関が保険金を支払い、追加費用などの損害を補ってくれます。事故が「起きた後」に助けてくれる、なじみやすい仕組みです。
こちらは、さらに安全性が高い仕組みです。私たちはお金を建築会社に直接払うのではなく、保証機関が管理する中立の口座に預けます。保証機関は工事の進み具合をチェックしながら、その口座から建築会社にお金を支払います。
エスクロータイプのすごいところ!
最大のメリットは、建築会社が大きなお金を先に持つことがないので、「支払ったお金が戻らない」というリスクがそもそも発生しない点です。万が一倒産しても、おうちを完成させるためのお金は安全な口座に確保されているので、次の会社への引き継ぎもスムーズ。
例えるなら、「保険タイプ」が事故後の救助隊なら、「エスクロータイプ」は事故を未然に防ぐ予防策。もし選べるなら、このエスクロータイプの保証を提供している会社は、お金の管理がクリーンで、お客さんを大切にする姿勢の表れとも言えるでしょう。
どっちがいいの?「住宅あんしん保証」 vs 「JIO」を徹底比較!
住宅完成保証を提供している機関はいくつかありますが、代表的なのが「株式会社住宅あんしん保証」と「日本住宅保証検査機構(JIO)」です。サービス内容は似ていますが、実は私たちにとって、とっても大事な違いがあるんです。
比較ポイント | 株式会社住宅あんしん保証 | 日本住宅保証検査機構(JIO) |
---|---|---|
会社の審査 | 厳しい&毎年チェック | 登録時に審査 |
保証のメイン | 追加費用 + 支払ったお金の両方 | 追加費用のみ |
保証上限額 | 最高1,100万円 | 最高700万円 |
私たちの注意点 | 「保証書」を必ずもらう | 支払いのタイミングを厳守! |
結論:安心感が違うのはどっち?
この比較から分かるのは、ほとんどの方にとって、株式会社住宅あんしん保証のプランの方が安心だということです。特に「支払ったお金(前払金)の損失」までカバーしてくれる点は、JIOにはない決定的なメリットです。
JIOの場合 → 500万円の損失は保証されません。
住宅あんしん保証の場合 → この損失も保証の対象になり、あなたの大切な資産は守られます。
この違いは、「誰がリスクを管理するか」という考え方の違いから生まれています。JIOは「支払いのルールを守る」という形で、私たちにもリスク管理への参加を求めます。一方、住宅あんしん保証は、厳しい会社審査などを通じて保証機関側がリスク管理の大部分を担い、私たちにはよりシンプルで直接的な安心を提供してくれるのです。
メリット・デメリットと「保証に入ってないけど良い会社」問題
住宅完成保証制度は心強い味方ですが、万能ではありません。良い点と、少し考えたい点を冷静に見ていきましょう。
❤️ もちろん、メリットはたくさん!
- 経済的な安心:言うまでもなく最大のメリット。「倒産」という最悪の事態から、金銭的に立ち直るための道筋を示してくれます。
- 心の平穏:「もしも…」という不安がなくなるので、家づくりの楽しい部分(デザインや間取り選びなど)に集中できます。
- 会社の健全性の証明:この制度に登録できる会社は、第三者機関の厳しい審査をクリアした、経営的にしっかりした会社だというお墨付きになります。
- いざという時のサポート:もしもの時、お金だけでなく、個人で探すのが大変な「次の建築会社」を探す手伝いもしてくれます。
😥 現実的なデメリットとコスト
- 費用がかかる:保証は無料ではなく、数万円~十数万円の保証料がかかります。
- 会社の選択肢が限られる:これが最大の悩みどころかも。この制度に登録している建築会社は、実はまだ一部です。あなたが「このデザインが好き!」と思った素敵な工務店が、制度に入っていない可能性も十分にあります。
「保証未登録」でも優良な工務店はある
ここで知っておきたいのは、とても評判が良く、経営も安定しているのに、あえて制度に登録していない会社もたくさんあるということです。「長年の実績こそがお客様への保証」「保証料の分、価格やサービスで還元したい」といった考えからです。
だから、「未登録=キケンな会社」と決めつけるのは間違いです。
でも、それは「リスク管理の責任」を、私たちが引き受けるということ。つまり、どちらを選ぶかという選択になります。
- 完成保証制度を使う → 保証料を払って、倒産リスクを保証機関にお任せする
- 未登録の優良工務店を選ぶ → そのリスクを自分で受け入れ、しっかり管理する
ほとんどの方にとっては、専門機関にリスクをお任せする方が、はるかに安全で賢い選択と言えるでしょう。
知っておきたい!保証が使えるケース、使えないケース
この制度を「何でも解決してくれる魔法」だと思っていると、いざという時に「話が違う!」なんてことになりかねません。保証の範囲と限界を、きちんと知っておきましょう。
「完成保証」と「瑕疵(かし)保険」、まちがえないで!
この2つは、目的もタイミングも全く別物です。
住宅完成保証制度 = おうちづくりの「生命保険」
建築中に会社が倒産してしまった時に、あなたを守ります。(加入は任意)
住宅瑕疵担保責任保険 = 完成したおうちの「健康保険」
引き渡し後に、家の構造や雨漏りなどの欠陥が見つかった時の修理費用を保証します。(法律で義務付け)
「瑕疵保険」はすべての新築住宅についていますが、それだけでは建築中の倒産リスクは全くカバーされないので、注意してくださいね。
保証の対象外になる主なケース
- 工事が止まっている間の仮住まいの家賃
- お庭や駐車場などの外構工事の一部
- 地震や台風など、自然災害が原因で工事が続けられなくなった場合
- 「保証書」が発行される前に会社が倒産してしまった場合(申し込み中ではダメ!)
- 【特にJIOの場合】決められたタイミングより多くお金を払いすぎていた場合、その超過分
これらのルールは、この制度が「建築会社の倒産」という特定のリスクに絞ったものだということを示しています。そして、その保証をしっかり機能させるためには、私たち自身も「ルールを理解して守る」ことが大切なんです。
あなたのやることリスト:安心な家づくりのための4ステップ
では、具体的にどうすればいいのでしょうか?このステップに沿って、慎重に家づくりを進めていきましょう。
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会社選びは「魔法の質問」から
検討しているすべての建築会社に、まずこの質問を投げかけてみてください。
「御社では、住宅完成保証制度を利用できますか?」
この答えによって、その後の進め方が変わります。
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「はい」の場合 → さらに詳しく聞く
「はい」と答えた会社には、どの保証機関(住宅あんしん保証?JIO?)を使っているか確認しましょう。できれば、保証内容が分かるパンフレットなどを見せてもらうと安心です。保証料がどう支払われるのかも、はっきり聞いておきましょう。
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「いいえ」の場合 → 自分でしっかりチェック!
もし、その会社を諦めたくないなら、ここからはあなたが「リスク鑑定士」になる番です。
- 第三者の信用調査を依頼する:会社の雰囲気や担当者の人柄だけでなく、信用調査会社を使って、会社の経営状態を客観的に評価したレポートを取り寄せましょう。
- 急かす会社は要注意!:「今月中に契約すれば大幅値引きします」といった、支払いを急がせるようなトークは、経営が苦しいサインかも。きっぱり断りましょう。
- 支払いのタイミングを交渉する:契約時の着手金はできるだけ少なく、支払いは工事が進んだ段階に合わせて「後払い」になるように交渉しましょう。
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契約から工事開始まで
契約書に、利用する完成保証制度の名前や費用について、きちんと書かれているかチェック!
最重要アイテム「保証書」
保証機関が発行する正式な「保証書」があなたの手元に届くまで、絶対に工事をスタートさせてはいけません。この一枚の紙が、あなたの安心の証です。
契約した保証制度のルール(特にJIOの支払いタイミングなど)は、きっちり守りましょう。
結論:「絶対安心」という土台の上に、あなたの家を建てよう
今の時代、家づくりには目に見えないリスクがたくさんあります。素敵なデザインや最新の設備に心がときめきますが、そのすべてを支えるのは、足元にある「お金の安心」という土台です。
住宅完成保証制度にかかる十数万円は、単なるコストではありません。それは、「もしも」という不安を「絶対安心」に変えるための、未来への投資です。ハイリスクなギャンブルではなく、安全で楽しいプロジェクトとして、家づくりを進めるためのチケットなのです。
特に、支払った大切なお金まで守ってくれる、手厚い完成保証制度を選べる会社を選ぶこと。それは、あなたの資産と家族の未来を守るためにできる、一番賢くて力強い決断です。
その選択をすれば、あなたは不安や恐れではなく、家族が本来感じるべきワクワクした気持ちと安心感と共に、夢のマイホームづくりという素敵な旅に出発できるはずです。
ただ家を建てるのではなく、
「絶対安心」という、何よりも頑丈な土台の上に、あなたの未来を築き上げてください。 🏡💕