親が住まなくなった実家。売るか、貸すか、解体するか、持ち続けるか。
この記事では、三重県の解体費用の相場、市町の補助金、そして期限が迫っている相続登記まで、判断に必要なことをまとめます。
三重県の空き家は6軒に1軒|地域でまるで違う
三重県の空き家率は16.3%です(2023年の住宅・土地統計調査)。全国平均の13.8%を上回っています。
県内の総住宅数は約87万戸、そのうち空き家は約14万3千戸。およそ6軒に1軒が空き家という計算です。
ただし地域によって事情はまったく違います。
| 地域 | 空き家率 |
|---|---|
| 北勢(桑名・四日市など) | 約13% |
| 中勢 | 約16% |
| 伊賀 | 約18% |
| 伊勢志摩 | 約22% |
| 東紀州 | 約34% |
北勢は県内で最も低い13%です。人口が多い地域なので軒数では最も多いものの、買い手・借り手が見つかる可能性は県内でいちばん高いエリアだといえます。
気になるのは中身です。県の公表では、適切に管理されず放置されている可能性のある住宅は約8万3千戸。空き家全体のおよそ6割にあたります。
放置するとどうなる|2つの「空き家」の違い
空き家を放置すると、行政から指導を受けることがあります。ここで大事なのが2つの段階です。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| 状態 | 放置すれば特定空家になるおそれ | 倒壊の危険、衛生上有害など |
| 行政の措置 | 助言・指導 → 勧告まで | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 強制的な解体 |
| 税金 | 勧告で住宅用地の特例が外れる | 同じ |
| 過料 | なし | 命令に従わないと50万円以下 |
「管理不全空家等」は2023年12月の法改正で新しくできた区分です。いきなり罰則がかかるわけではありません。
「固定資産税が6倍」の正しい意味
住宅が建っている土地は、固定資産税のもとになる金額が6分の1になります(200㎡以下の部分)。勧告を受けるとこの優遇が外れます。
ここで「税金が6倍になる」と言われるのですが、実際の税額はそこまで上がりません。
住宅以外の土地には、評価額の70%を上限とする調整のしくみがあるからです。実務上、税額の増え方はおおむね4倍前後におさまります。自治体の公式サイトでも「約4倍」と説明されています。
また、上がるのは勧告を受けた翌年度からです。空き家になっただけで上がるわけではありません。

4つの選択肢|どれを選ぶかの決め方
空き家の行き先は、大きく4つです。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 解体して売る | 建物の傷みが大きい/買い手が更地を求めている | 解体費が先に出ていく。翌年から土地の税金が上がる |
| 古家付きのまま売る | 建物がまだ使える/解体費を出したくない | 買い手が限られる場合がある |
| 貸す | 立地がよい/改修費を回収できる見込み | 改修と管理の手間。借り手が付かないリスク |
| 持ち続ける | 将来使う予定がある/すぐ決められない | 管理の手間と費用が続く。放置は不可 |
判断の順番はシンプルです。
- 建物はまだ使えるか(雨漏り・傾き・シロアリの有無を確認)
- 自分や家族が使う予定はあるか
- その土地に買い手・借り手が付きそうか(不動産会社に査定を頼む)
- 解体するなら補助金が使えるか(市町の窓口へ)
ひとつ注意点があります。市街化調整区域にある実家は、売るときの条件が変わります。新しく家を建てられる土地かどうかで、買い手の数が大きく違うためです。
三重県の解体費用|木造30坪で110万〜160万円
三重県で木造の家を解体する費用は、坪あたり3.5万〜5.5万円が目安です。30坪なら110万〜160万円になります。
幅があるのには理由があります。調査によって金額に含まれる範囲が違うからです。
| 調査 | 三重県の木造 | 金額の範囲 |
|---|---|---|
| 解体業者の実績データ | 坪 約3.7万円(桑名市は約3.5万円) | 本体工事に近い |
| 見積比較サービス | 30坪台で坪 約5.3万円 | 養生・重機回送・処分費・諸経費を含む総額 |
実例では、桑名市の29坪の木造で約120万円(税抜)という見積もりがあります。四日市市の78坪では約176万円でした。
見積もりが跳ね上がる5つの要因
- 前の道路が狭い(大型の重機やトラックが入れない)
- 隣の家が近い(手作業の割合が増える)
- 庭木・庭石・ブロック塀がある
- アスベストの調査・除去が必要
- 家財が残っている(実家はこれが最も多い)
家財の処分は、自分で片付けられる分だけでも減らすと費用が下がります。
解体費は全国的に上がっています。木造の坪単価は2020年と比べておよそ11%上昇しました。先送りするほど高くなるのが現状です。

桑名市・四日市市の解体補助金
解体に使える補助金はあります。ただし条件はかなり厳しめです。
| 市 | 制度 | 内容と条件 |
|---|---|---|
| 桑名市 | 特定空家等除却補助金 | 解体費の1/3・上限30万円。市が「特定空家等」と認めたものに限る。予定8件の先着 |
| 四日市市 | 特定空家等除却費補助 | 4/5・上限50万円。特定空家のほか、75㎡未満の狭い敷地や道路に接していない敷地も対象 |
| 四日市市 | 旧耐震空き家除却促進補助金 | 20万円。昭和56年5月31日以前の建物で、解体後の土地を空き家バンクに3年以上登録することが条件 |
三重県にも支援制度はありますが、個人に直接支給されるものではありません。県は市町を支援する立場です。窓口は必ず市町になります。
なお桑名市では、解体後に土地の固定資産税が上がる場合、税務課に事前相談すると減免を受けられることがあります。解体を決めたら市役所で確認してください。
売る前にやる登記3つ|相続登記は2027年3月末が期限
実家を売るにも解体するにも、名義が整っていないと動けません。
| 登記 | いつまでに | 怠ると |
|---|---|---|
| 相続登記 | 相続を知った日から3年以内 | 10万円以下の過料 |
| 建物滅失登記 | 解体した日から1か月以内 | 10万円以下の過料 |
| 境界の確定 | 売却前に(義務ではない) | 境界が不明だと売れないことがある |
すぐに遺産分割がまとまらない場合は、「相続人申告登記」という簡単な手続きで義務を果たすこともできます。
建物を解体したら、1か月以内に建物滅失登記をします。登録免許税はかからず、自分で申請することもできます。土地家屋調査士に頼む場合は4万〜5万円ほどが目安です。

売るときの税の特例|3,000万円控除は2027年末まで
相続した実家を売ると、譲渡所得に税金がかかります。ただし大きな控除が用意されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 3,000万円(相続人が3人以上の場合は1人2,000万円) |
| 期限 | 2027年12月31日までの売却 |
| 建物の条件 | 昭和56年5月31日以前の建築/区分所有の登記がされていない |
| 住んでいた人 | 亡くなる直前、被相続人以外に住んでいた人がいないこと |
| 売る時期 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却価格 | 1億円以下 |
2024年の改正で、使いやすくなった点があります。
以前は売主が解体か耐震改修をしてから引き渡す必要がありました。今は買主が引渡し後、翌年2月15日までに解体や耐震改修をしても適用できます。
つまり「解体費を先に出せないから売れない」という状況が、かなり減りました。
どちらも条件が細かいため、売却を決める前に税務署か税理士に確認してください。
当面持ち続けるなら|最低限の管理
すぐに決められないこともあります。その場合は「管理不全」にしないことが最優先です。
行政が空き家の状態を見るとき、着目するのは次のような点です。月1回、この5つを見に行きましょう。
- 窓(ガラスの破損・施錠)
- 屋根(瓦のズレ・落下の危険)
- 外壁(はがれ・傾き)
- 雑草・庭木(隣地へのはみ出し)
- ごみ(不法投棄されていないか)
あわせて通水と換気を。水を流さないと排水管が乾いて臭いが上がり、換気をしないと湿気で傷みが早まります。草刈りは春・夏・秋の年2〜3回が目安です。
遠方に住んでいて通えない場合は、管理サービスもあります。相場は月5,000〜15,000円程度とされています(室内の管理込みなら8,000〜12,000円が中心)。
それでも手放せないときの選択肢
買い手が見つからない土地には、相続土地国庫帰属制度という道もあります。相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。
ただし条件があります。建物があると申請できません。先に解体が必要です。
費用は審査手数料が土地1筆14,000円、負担金が原則20万円。解体費150万円と合わせると170万円ほどを払って国に渡す形になります。「タダで手放せる制度」ではない点に注意してください。
北勢の8市町はすべて空き家バンクを持っています。四日市市では登録で2万円、成約で2万円の奨励金もあります。売買や賃貸の相手を探す入口として活用できます。
三重で空き家に迷ったら
空き家の相談がややこしいのは、不動産の話と建物の話が混ざるからです。
「解体していくらで売れるか」は不動産の領域。「この建物はまだ使えるか」は建築の領域。窓口が分かれていると、話が前に進みません。
ケイ・スタイルハウジング(桑名市)
桑名市のケイ・スタイルハウジング(株式会社KYK・2006年設立)は、宅地建物取引業の免許(三重県知事登録(4)第3101号)を持つ工務店です。
不動産の売買とリノベーションの両方を扱っているため、「売る」「直して使う」「建て替える」を同じ窓口で相談できます。対応エリアは三重県北勢・愛知県西部・岐阜県西濃です。
実家を解体して、その土地に新しく家を建てるという選択もあります。建て替えの段取りと費用はこちらにまとめました。
逆に、中古住宅として買って住みたい人に向けた話はこちらです。売る側の参考にもなります。
よくある質問
まとめ|先送りするほど選択肢が減ります
空き家は放っておくと費用も手間も増えていきます。解体費は上がり、建物は傷み、税の特例には期限があります。
まずは相続登記を済ませ、建物の状態を確かめる。そこから4つの選択肢を比べれば、判断できます。
- 期限: 相続登記は2027年3月31日/3,000万円控除は2027年12月31日まで
- 解体費: 三重の木造30坪で110万〜160万円。補助金は条件が厳しい
- 税金: 勧告を受けると優遇が外れる。税額は約4倍が上限
- 管理: 窓・屋根・外壁・雑草・ごみの5点を月1回



